グレン・グリーンウォルド氏、CNNのパリ同時多発テロへの報道姿勢を批判

2013年、NSAの極秘の監視プログラムの実態を暴露し世界衝撃を与えたスノーデン事件。そのスノーデン氏の暴露を最初にガーディアンで報じたのが、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルド氏です。

グリーンウォルド氏が主導したスノーデン事件の報道で、ガーディアンは2014年度のピューリッツァー賞を受賞しています。

アメリカの既存メディアに対する批判的なスタンスを持っているジャーナリストとしても有名なグリーンウォルド氏。

先日発生したパリ同時多発テロ事件に対するメディアの報道に関しても批判的な発言を行っていますが、今回は特にCNNに批判的な発言を行っています。

CNNが行ったイスラム教徒の活動家へのインタビュー

11月19日、グリーンウォルド氏は、全米や世界各地のインデイペンデントメディアで放送されている(日本ではかつて朝日ニューススターで放送)リベラル系のニュース番組「デモクラシーNOW!」に出演。

番組内では、CNNアンカーのジョン・ヴォース氏が11月14日行ったパリの「フランスのイスラム教徒への差別に反対する会のヤスター氏インタビューの一部を放送。以下のやり取りが放送されました。

ヴォース氏:私の見る所、これは非常に計画的に行われたテロだと思いますが、誰かしらがこのテロに関して、七人の容疑者と関わりを持っていたことでしょう。

その「誰かしら」というのは、恐らくフランスのイスラム社会の人物だと思いますが、フランスのイスラム社会からは未だにその件に関する発言が出ていないようですね?

ヤスター氏:イスラム社会は今回のテロの容疑者とは全く関係がありません。犯人がイスラム教徒であることが伝えているからという理由だけで、私たちイスラム教徒に責任があるなどということはありえません。

彼らの情報を掴んでいたのは我々ではなくシークレットサービスでしょう。私たちがテロリストに関する情報を持っている訳がありません。

ヴォース氏:なぜ「持っている訳がない」と言えるのですか?今回もテロにおけるイスラム社会の責任をどのようにお考えですか?

ヤスター氏:あなたの仰っていることは、このテロ事件はフランス国民に責任があると仰っているように..

ヴォース氏:お話されている途中にすみません。しかしあなたは今回の責任をどのようにお考え..

ヤスター氏:今回のテロに関して私たちがどのように責任を持っているというのですか?

ヴォース氏:イスラム社会の中でテロを起こすための訓練などを受けていた可能性があるのであれば、その全容を解明する責任があるのでは?

ヤスター氏:とんでもない!彼らは国外で訓練を受けていたのであって、フランスのイスラム社会は何もしていません。

強いて言うのであれば、非難されるべきなのは、フランスがこれまで実行してきた外交政策でしょう。

この映像に続き、デモクラシーNOW!ではインタビュー終了後にヴォース氏と共にアンカーを務めるイーシャ・セセイのやり取りも流されます。

ヴォース氏:このテロに対する非難をイスラム教徒から聞いたことがないのですが、今後の動向を含め様子を見る必要がありますね。

セセイ氏: ヤスター氏は自分たちには責任がないと言っていましたが、こういうことがあると、疑いの目がイスラム社会に向けられるというのもまた事実な訳で、そのことを彼らも理解する必要があるのではないでしょうか?彼ら側からも何かをするべきだと思うんですよね。

ヴォース:責任のある行動をとってもらいたいという言い方が私としてはしっくりきますね。

グリーンウォルド氏の批判

CNNのインタビューが流されたあと、デモクラシーNOW!の司会者のエイミー・グッドマン氏がグリーンウォルド氏にコメントを求めました。グリーンウォルド氏は以下のように答えています。

「率直に言って、酷すぎるインタビューです。呆れて何も言えません。いくら聞いても、これがジャーナリストと呼ばれる人間が行ったインタビューであることが信じられません。

私もヤスター氏を知っていますが、彼はパリの人権活動家です。頭も良く、教養もある人物です。法や政治についても深く理解しています。

彼がイスラム教徒だから責任がある。イスラム教徒だからテロリストだと言ったような言動は、当然非難されるべきです。」

「ジャーナリストは戦争に飢えている」

司会者のエイミー・グッドマン氏は、グリーンウォルド氏に以下の質問をします。

グッドマン氏:このような状況に対し、メディアは戦争以外の選択肢を考慮していないように見えますね。パリでのテロの後、ロシアもフランスもイスラム国が首都であると主張しているラッカを空爆しています。メディアは民間人の犠牲者について報道していませんが、空爆が続けば難民も増え欧米で逃げる人が今後も増えますよね?

戦争が解決策として機能しないということはタリバンが再び掌握しつつある今のアフガニスタンの状況を見ても明らかです。平和的な解決策をメディアも求めるべきだという風に思いますが。

グリーンウォルド氏: あなたの言う通りです。911の後、共和党も民主党も、ジャーナリストも、アメリカ人の九割はアフガニスタンへの侵略を支持していました。しかし、それが上手くいっていないのは明らかであり、状況は今悪くなる一方です。

アフガニスタンを通じて、「怒りに任せて爆弾を落としても物事は解決しないということをアメリカ社会は学ぶ必要がありました。しかし、人間は怒りに任せて行動してしまう習性を持っている生き物でもあるんですね。それが戦争が無くならない理由です。

メディアに関して言うと、彼らが戦争から恩恵を受けているというのがとても大きいんです。戦争があればテレビには戦場や兵士が映り、多くの人がニュース専門チャンネルを見ます。戦時中、アメリカ人はメディアに釘付けになるんです。それはジャーナリストにとっては興奮すべきことなんです。戦争で良い報道をすれば賞だって狙える。そしてそれは履歴書に一生残る訳です。それ故にメディアの人間は国家に従うようになり、自分たちには戦争を伝えるという目的があると思うようになります。

「自分たちは、西洋文明、自由や民主主義を守るためにアメリカが戦っているということをアメリカに伝える必要があるのだと。そういう話を聞くと、人は気分が良くなるんですよ。特にジャーナリストはね。ジャーナリストは戦争に飢えてるんです。

だからオバマ大統領にも「シリアにいつになったら米軍を送り込むんだ?」と追求する訳です。911と全く同じことを、メディアがパリの件で繰り返しているのをみると、なんとも言えない気持ちになります。

先日、本誌でもお伝え共和党の難民政策を批判したCNNの記者の停職処分について、グリーンウォルド氏は「イスラム教徒に差別的な言動をした記者は問題無いとされているのに、難民に同情を表した記者が停職になるのは矛盾していると批判しています。

メディアの報道に関しても、様々な論争を引き起こしているパリの同時多発テロ事件、みなさんはどのように思われますか?

参考記事

https://theintercept.com/staff/glenn-greenwald/

http://www.democracynow.org/about

http://www.asahi.com/showbiz/tv_radio/TKY200905080228.html

http://www.democracynow.org/2015/11/19/glenn_greenwald_on_submissive_medias_drumbeat

http://www.theblaze.com/stories/2015/11/23/glenn-greenwald-goes-off-on-cnn-over-anti-muslim-coverage-during-appearance-on-cnn/

AUTHOR

清田健介

THE MEDIA HACK寄稿者。翻訳者。