NSAによる日本政府への盗聴を報じたWikileaks:日本のメディアの存在感

手前味噌ですが、昨日自分の書いた記事についてご紹介します。

アメリカのNSAが、第一次安倍政権や各省庁、三井・三菱などを盗聴していたとWikileaksに暴露されたニュースです。 このニュースからいくつかの(メディア的な)含意が読み取れるのではないかと思います。

まず、このニュースがイタリア・エスプレッソ紙(L’espresso)と南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)、そして日本の朝日新聞という国際チームによって調査されたにもかかわらず、朝日新聞の存在感が(ほとんど)感じられなかったということです。

朝日の記事はこちらだと思われますが、そもそもトップニュースの扱いではなく、更新日もなんと8月1日10時50分です。

http://www.asahi.com/articles/ASH705RCWH70UHBI020.html

内部でどのようなやりとりがあったのかは分かりませんが、なぜこのニュースをそれほど重要視していないのか、非常に不思議です。

次にこのニュースの重要性ですが、おそらくWikileaks側はTPP協議のタイミングを狙って出してきたと思われます。安保関連法案の議論が盛り上がる日本にとっては、日米関係について考えるという意味でも、大変重要なニュースです。

こうした2つの側面からも重要なニュースについて、主要メディアがそれほど大きな扱いをしていないことに、(Wikileaksというセンセーショナルな存在をうまく活用できない)日本のメディアの戦略的な弱さや、Wikileaks側からも重要なパートナーとして認識されないことからも分かるように、国際社会での存在感のなさを感じます。

例えば、英Guardianのように、Wikileaks報道によって一躍名を高め、国際的にも重要なメディアに躍り出た新聞社はいくつかあります。

アジアの状況を的確に読み解き、日米関係についても批判的に検討するという意味では、この報道は日本のジャーナリズムにとってチャンスだったはずです。

にもかかわらず、十分な報道がなされなかったことは不思議でなりません。

朝日新聞に限って言えば、「安保関連法案に反対」というスタンス1つとっても、ただ「デモが行われている」や「反対の声が増えた」ということを報じるのではなく、ビックピクチャー的な視点で、日米関係や安倍政権の脆弱性、国際社会における日本の立場などを読み解きながら、安保法案への立場を明らかにしていくべきでしょう。

もちろん(日本にもそれがあるとすれば)新興メディアこそ、伝統メディアが十分にカバーしない、これらのニュースをしっかりつ扱うべきです。アメリカでいう、PoliticoやThe Intercept、そしてVoxなどのポジションは、日本ではポッカリと空いていると思います。

さてこのように、今回のようなニュースは本来、メディアの意味や価値を考えさせられるトピックのはずです。

いつまでも、「メディアのマネタイズは?」や「メディアとは何か?」というふわっとした議論が続くならば、それはメディアに関心のある一部の人々のみに占有された話題となってしまい、広告・テクノロジー領域の問題へと収斂してしまいます。

そうではなく、「メディア/ジャーナリズムの意義とはなにか、そしてそれらは、民主主義にどのような寄与が出来るか」という幅広い視点での議論が必要なのではないか、ということです。

【速報】米NSA、日本の内閣や各省庁、三菱などを盗聴か:Wikileaksが暴露 | THE NEW CLASSIC [ニュークラシック]

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石田健

石田健

1989年生まれ。THE MEDIA HACK 編集長。 大学在学中より、企業ブランディングファームに参画して、バイオ系上場企業の案件などを担当。 2011年の早稲田大学在学中に株式会社アトコレを創業。その後、大学院での研究生活を経て、2015年より株式会社マイナースタジオ代表取締役社長。2015年に株式会社メンバーズへ売却。 早稲田大学文学部卒業、政治学研究科修士課程修了(政治学)。