英ピアソン、Economist株も売り出しへ:Economistという “Zeitgeist” について

FTを日経に売却したことで、その動向に注目が集まっている英ピアソンですが、やはりEconomist株も売却予定だそうです。

さて、これは個人的な意見ですが、Economist株がどこに売却されるのかというのは、FTの日経以上に興味のある話題です。

もちろん、FTは会社丸ごとの売却なのに対して、ピアソンが保有しているEconomist株は50%なので、その前提は違います。Economist株は、他にロスチャイルド家などが保有しており、もしその株式が新たな企業に移っても、議決権などは既存の大株主の影響が強いままです。

しかしそうした前提の違いがあったとしても、Economistというのはメディアにとって特別な「ブランド」です。

以前にQuartzが、「俺たちは90年代のWiredや1840年代のThe Economistになるぞ!(Like Wired in the 1990s and The Economist in the 1840s, Quartz embodies the era in which it is being created. )」という宣言をしていることをご紹介しました。

これはあながち間違いではありません。

90年代にWiredが「ハッカー文化」の、1840年代にThe Economistが「自由主義」という思想の騎手になったことは、まさにメディアが時代精神(=Zeitgeist:ツァイトガイスト)を牽引していた事例です。

(重ねて言いますが、これはあくまでも僕の考えですが)本来、メディアを作るというのは、この「Zeitgeistを作り出すんだ!」という挑戦に他なりません。

いくらBuzzfeedが巨大なメディアとなっても、Snapchatが新しいメディア企業なんだ!と言われたとしても、それは単にビジネスとして大きくなっているだけの話で、Zeitgeistをつくったこととは全く別です。

もちろん、FTを買収した日経も「Zeitgeistをつくりだす」という意味ではダメです。もちろん彼らにも素晴らしい報道をしている側面はありますが、FTにかかれば「企業のプレスリリースをそのまま垂れ流ししているメディア」という側面が大きいことは否めません。

その意味で、「New Global Economy」の輪郭を描き出すことで、新たなZeitgeistを見出そうとするQuartzの挑戦に、個人的にはしびれるわけです。

The EconomitsやWiredは、そうした意味で一つの時代を象徴するメディアでしたし、真の意味で「影響力のある人々に影響を与えている」メディアでした。

もちろんそういう種類のメディアをつくることは非常に難しいです。ある程度の規模を追求しなければビジネスとしては成り立ちませんし、特に紙からウェブへの変化が加速したことで、広告単価の下落という問題も大きくなっているからです。

そして、こうした現実的な問題に直面しつつも、やはりEconomistは、いまだに大きな影響力をもっているのです。

一時代を築いたEcnomistの新たな所有者が誰か?というニュースは、こうしたメディアの意味を理解していると、非常に興味深い話題に見えてくるでしょう。

http://qz.com/464073/pearson-wants-to-sell-the-economist-too-but-has-to-deal-with-its-baroque-ownership-structure/

AUTHOR

石田健

石田健

1989年生まれ。THE MEDIA HACK 編集長。 大学在学中より、企業ブランディングファームに参画して、バイオ系上場企業の案件などを担当。 2011年の早稲田大学在学中に株式会社アトコレを創業。その後、大学院での研究生活を経て、2015年より株式会社マイナースタジオ代表取締役社長。2015年に株式会社メンバーズへ売却。 早稲田大学文学部卒業、政治学研究科修士課程修了(政治学)。